Definition

組織の死角とは何か

組織の問題が起きるとき、私たちはまず「誰が悪かったか」を探す。しかし長年、組織の失敗と不正を内側から見続けてきた経験から言えることがある。問題の多くは、悪意から生まれていない。

正しい方針、善意の制度、真面目な努力——「これで変わるはず」と信じて打った手が、なぜか組織を止める。その領域を、組織の死角と呼ぶ。

組織の死角とは、善意の方針・正しい指示・真面目な努力が、
いつのまにか逆機能を生む領域のことである。
不正・事故・沈黙・形骸化——それらは個人の悪意が起こすのではなく、
その多くが設計の失敗から生み出される。

起きている現象は不思議でも何でもない。
設計・仕様どおりの結果が現れているに過ぎない。

Philosophy

性弱説——思想の核心

組織や制度を設計するとき、人は性善説を前提にする。期待する能力、当然の倫理観——それをベースに設計するから、問題が起きると個人の「善」を疑い、倫理研修を繰り返すことになる。

しかし性悪説で設計すれば、組織貢献の意欲が失われ、組織力そのものが失われる。このメソッドが立つのは、第三の前提——性弱説である。

性善説による設計
人は本来善であるという前提で設計する。問題が起きると「善」を疑い、個人の倫理を鍛えようとする。しかし設計は変わらないため、同じ問題が繰り返される。
→ 問題が繰り返される
性弱説による設計(このメソッドの立場)
人は善でも悪でもなく、弱い。環境や前提に変化があれば、誰でも過ちを犯しうる脆弱性がある。だから設計に弱さを折り込み、仕組みで補完する。
→ 設計で人が自然に機能する
性悪説による設計
人は本来悪であるという前提で設計する。押さえ込みは一時的に機能するが、悪として扱われ続ける存在が組織貢献するはずがなく、組織力が失われる。
→ 組織力が失われる

人を信じる設計はおかしくない。しかし、人が弱くなる瞬間に備える設計がなければ、信頼は裏切られ続ける。性弱説は、人への不信ではなく、人への現実的な向き合い方である。

Approach

人を責めず、設計を問う

このメソッドの根本にある発想は、三つの原則に集約される。

I
問題は仕様どおりの結果である
起きている現象は不思議でも何でもない。その行動が合理的に見える設計になっているから、その行動が起きる。設計を変えなければ、結果は変わらない。
II
正しさは、使いどころを設計して初めて機能する
正しいルールも、正しい制度も、設計なき運用では逆機能する。「守れ」と言うだけでなく、どの場面でどう使うかを組み込むことが設計の仕事である。
III
人が互いに意味を与え合う組織をつくる
設計の最終目的は、管理や監視ではない。人が自然に機能し、互いの行動に意味を見出せる組織の構造をつくることである。